私が花屋兼植物屋に導かれた理由
それは誰より植物が好きだったからに違いない

小さな頃から家には当たり前のように花が飾ってあった
花屋に並ぶような華美な花ではなく
庭に咲く小さな花や枝に咲いた椿や梅など

思えばこの頃から私の暮らしに根ざしていたのだと思う
当たり前に植物や花がそばにあって
傷つきやすいから優しく触れることも
心を込めてお世話をすることも
母の背中を見て学んでいたように思う

私は花屋で働きたいと思ったこともないし
働いたことももちろんない

趣味で暮らしに根ざしていればいい
それで充分に満たされていたから

いろんな流れで花屋となり
最初は経験もないのに、
専門の技術もないのに
お金をもらうっておこがましいんじゃないか？と
見切り発車の自分自身に自問自答を繰り返した

それでも必死に続けた日々の中
理解して応援してくれる人が一人、
また一人と
足繁く通ってくださった

何ひとつ誇れるものもない、
自慢できるような特技も能力も持ち合わせない

それでも花が大好きで
植物が可愛くて面白くて仕方ないんだということだけは
どんな老舗の花屋にもアーティストにも
負けない愛情があるんだと胸を張れる自信だけはあった

いつもワクワクしてしまう
元気な姿を見るとドキドキもする

いまだに仕入れの金額も計算できない
これはあの人が好きね
この子はあのオーダーに入れてみよう！

そうなると際限なく仕入れてしまう
売れなければ持って帰って可愛がればいい
誰かの目に一本でも止まればいい
世界にはみたこともない花で溢れている
宮崎にはその振り幅が少ない
だから世界中あちこちから取り寄せる
楽しんでもらえたらそれで満足だと真剣に思う
もっともっと色んな花をみんなに見せたい

商売には向いていないねとよく笑われる

そんなわけで仕入れた花は動物のように可愛がるし
日々話しかけてお世話をする
水替えしながら変化に気付けるようにする
小さな変化も見逃さないために
こまめにお世話をする

少しおせっかいがすぎて人と人だと距離感を間違えがちな私も
花たちとは絶妙な距離感を保てる
互いに心地良い距離感で必要としあえる

次の里親さんが来るまでは
私が大切に守るんだといつも話しかける

よくお客様に、
ここのお花はすごく持ちが良くて
ずっと元気なんです！
不思議！と言われる

その言葉が私や花たちへの何よりの褒め言葉であり
旅立ったあの子もこの子も元気に頑張って
可愛がってもらっているのだろうと想像する

魔法をかけているのですか？とか
ここに来ると不思議とほっとするとか
この店の独特の優しい香りはなんの花ですか？
などと聞かれたり言っていただくこともあり
私は心から嬉しいなあと花たちと目を見合わせる

持ちがいいとすればそれは私が話しかけて可愛がっている花たちを
連れ帰ったお客様が更に気に留めて可愛がってくださるから。

雑然と並べられたものと、大切におめかしして並べられた花
その後の扱いや勢いが変わるのは当然なんじゃないかと思う

なんでもきっとそう
ストーリーやバックボーンがあるものを
人は愛するし大切にしたいと思う
そんな気持ちは伝染する

こんな時だからではなく、
花を日常的に飾る私の大好きなお馴染みのお客様や友人知人は
日々手に取るもの
身につけるもの
口にするものさえも
物語があるものを見つけ出し
拾い上げて自らの暮らしを潤いで満たす

それは贅沢をすればいいとか
お金をむやみに使おうってことではなくて
小さな一片の積み重ねが
自分自身の今日という日を
周りの大切な人たちの今日という日を
創り出していることを知っているから

付け焼き刃では何事も深く知ることはできない

先のことは不安かもしれないし
漠然と先の見えない最近のこの世界は
少し怖い

それでも起こってもないことに一喜一憂するのも１日
目の前にある光を感じ取って
大切なものを慈しんで抱きしめるのも１日

不自由さはきっと本質的な自由を生む出す

私はそう感じているし
心を解き放てば
どこにだって飛べる
人間は豊かで無限で面白い

それぞれの使命
それはどこで色や形を変えるか
繋がっていくかわからない

全てのことにきっと意味がある
それをやってやろうじゃやないか！と
楽しんだものに活路は見出され続けるはず

私の目下の使命

それはここにいて
花たちの力を沢山の人に繋げること
生産者さんの想いも
市場の方の苦労も
全部受け止めてただ直向きに
脇目もふらず
今日花を一本でも多くの人に
届け続けること

そうすればきっと沢山の家に
光が灯る
力になる
心を優しく包む

花の力を
届け続けるためなら
どんな努力だって
苦労だって
厭わないから
明日も健やかに
ここで笑っていようと思う

扉を開いてやってくる全ての人に
その一輪を届けるため

花を飾ってみませんか。