対等
以前、私の尊敬するフォトグラファーの親友は言った
「被写体とは対等な状態でないと撮ってはいけない」
当時キョトンとして聞いたその言葉
ずっと胸の奥に刺さっていた。
その意味を私は後々味わいながら知ることになる。
相手のエネルギーが弱っている時、
自分が上位にたった状態では撮るべきではない
デリカシーとか思慮深さを含む洞察力
エゴイズム丸出しみたいな写真は誰も豊かにはなれない
そういうことは写真を撮る上でも大切なことだけど
全てのことに繋がるように思う
対等な力が重なる時
ものすごい吸引力が発動してスパークする
互いの潜在能力は余すところなく押し出されて顔を出す
昨日行ったフォトグラファーflassco madiraさんとの花と写真のセッション
「委ね、花纏う」
即興でその方だけのために花を束ね、
花に身を委ね纏ったその方だけを写真に収める
3人の立ち位置は絶対的に対等であって
互いに集合するその瞬間まで何も聞かされず衣装もメイクも前情報もない
何なら来月に行うセッションの方たちは会ったことも姿を見たこともない
はいスタート!で始まり始まり
ただ記念撮影をするためのセッションではなく
内なる自分と外の自分
そのチャンネルを無理に合わせることなく
ただ在りのままの姿を映し出す
花は不思議な力を持っていて
傍にいるだけでそっと心を緩め、解いてくれる
その経験は私だけじゃないはずだと思う
花束をもらった人は皆瞬間的にぱああっっと表情が変わる
その表情の変化は老若男女、赤ちゃんもおじいちゃんも
皆顕著に現れる
他のギフトであんなに表情を柔らかくしてしまうものを
私は知らない
花屋だからってわけじゃない
昔から花の持つ不思議なほどの魅力を
なぜだろう?といつも考えていた
花はただそこに在る
誰にも見てもらえなくてもいい
未来に枯れても何にも怖くない
他人の評価なんてどうでもいい
隣の花がどうだとかも気にしない
自分が咲けるか、咲く力を蓄えていけるか
それのみに命をかける
ただ季節が巡れば
蕾をつけ、花を咲かそうと奮闘する
雪の下からでも、強風の日でも
どんな状況でもただ根を張り咲く日を待ちわびる
いつもフラットでいる
それが花
店にいる花たちも太陽が昇れば花びらを膨らませて
夕暮れになると花びらをそっと閉じる
とても素直で抗うことなく
ただ咲く
そして終わりが来るその瞬間まで
そんなことを繰り返す
すごいなと思う
私は花といることで
日々いろんなことを教わる
花って先生なんだと思う
その花を纏うことで
誰かの何か一歩になればいいなと思う
写真とは偽れない
正しく言えば偽ることはいくらでもできるけど
それは写真に出てしまう
心を裸にして
向き合うはファインダーではなく自分自身
超えたくても超えられないいろんな自分
彼女の写真はそれをあらわにしてしまう
その人への直感だけで花束をいくつか束ねる
それを手渡してしばらく花束を抱えていた被写体の彼女は
堪えきれず涙を零した
後から後から涙は頬を伝っていた
気づけば私も同じタイミングで涙が溢れていた
「花束を持った途端、そのエネルギーに胸を掴まれた」
そう泣きながら美しく彼女は笑った
人の泣いている表情が
こんなに切なくて美しいことを
私は改めて知った気がした
皆何かしらと闘っている
きっと誰もがみんな
そして究極その敵は自分自身なんだということ
それも段々と気付いてしまう
どこにも逃げることはできなくて
向き合い続けるしかない
生きるということ
なんだか花たちが魔法をかけたら
心の結界が容易く流れ出してしまう気がした
私は日々花に囲まれて暮らしている
それは生業でも在るにもかかわらず
いつも救われているのは結局私なんだということ
この場に居させてくれるのはここに来てくださる
お客様ひとりひとり
私は公園を託されている指定管理者みたいなもので
好きに花とこの場を作らせる機会をもらっているだけ
おこがましいけれど
お客様と私は対等で在ると思っている
この場をそれぞれの都合がいいように利用して
都合よくはけ口にしてもいいし
リフレッシュの場でも
リセットの場にでも
使ってもらえたら本望だと思う
一緒に楽しんだり悲しんだり
そんな風でいい
私が作ったようでそうではなかったこの場所
もはや沢山の方がこの店に血液を流してくれている
それは澄んだ血液、そうでなく心地悪い人もいるだろう
いろんな感情を抱く人がいて然りだと思う
そのどれをも否定せず
私はただここに居たい
ただ季節がきたら蕾をつけ
花を開こうと気合を入れて咲く日に向けて努力する
ただそれだけがとても難しくて
困難な時もあるけれど
きっと私はまたいびつな蕾をつけるんだと思う
懲りずに何度も何度も
凸凹な私の一生懸命を応援してれる人がいる限り
ここで咲き続けたい
誰かの拠り所で在れるよう
明日も明後日も
ここで咲こう
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