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関東から10数年前に移住したお客様
縁もゆかりもなかった土地で色んなご縁が結びついて
木城町で福祉の会社を夫妻で立ち上げて
先日大きな介護福祉施設を開設されました。

店がオープンした当初から通ってくださるまだ若いご家族
小さなお子さんから小学生まで6人の8人家族です。

今回の事業拡大に伴う施設開設の設計段階からお話を聞かせていただき
空間装花の相談も受けていました。

設計、施工中に奥様は第6子の妊娠、出産もあり
その上コロナというこの予期せぬ情勢

ただでさえ実家も遠く、甘える場所も近くにはない

とても仲の良いご家族ながらも本当に大変な言葉に尽くせぬご苦労が
沢山あったろうと思います。

ある日関東のご実家のお母様から電話がありました。

「開設にともなってお祝いに思いきり華やかな花を送って欲しい
施設にくる沢山の方にも見ていただけるように
生花の花を贈りたい。
経営するのは介護施設だから不用意に会いに来ることもできない
孫にもまだ会えていないし、何も娘たちにしてあげれない・・
せめて頑張った娘たちに彼女が好きな店の花を贈りたいのです。」

その後もメールでも何度もやりとりしてご両親からの大切な想いを託されました。

空間の装花は長く楽しめるものがいいとのご注文でしたので
アーティフィシャルフラワーやドライフラワーで各空間を装花しました。

お二人の想いをそれとなく伝えて残るものにしたほうがいいのか?
勝手なおせっかいで一瞬悩みました。

それでもご両親が生花がいいと言われていたお気持ちを汲んで
彼女が好きな花を国内外から集めて当日に挑みました。

両手でギリギリ抱えられるくらいの大きなフラワーアレンジメント

メッセージカードには何と入れましょう?と聞いたところ

「よく頑張ったね!!
 開設おめでとう」

朝イチに最高な状態で木城町まで配達できるように
早朝6時頃からアレンジをつくりながら
印字したメッセージカードを横目に見て
気づけば私は泣きながらアレンジをしていました。

最初の一言が
お祝いでもおめでとうでもなく

よく頑張ったね!!

今思い返しても涙がこぼれますが
親ってきっと幾つになっても子供のことが誰よりも心配で
想いを巡らせているんだろうなと。

何かしてやれないだろうか?
何ができるだろうか?
そんなことばかりきっと四六時中考えていて
こんな世界の中で物理的にそばにいて手助けできないことを
歯痒く申し訳なく思いながら
せめて娘夫妻の晴れの日に目一杯の餞の花を贈りたかったんだろうなあと。

どうしても娘さん本人に届けたくて
ご自宅で事務処理していると聞いて
こっそりご自宅へと配達しました。

ドアを開けた彼女は目をまん丸にして
ご両親からだとわかるとさらに嬉しそうに目尻を下げました。

花の勢いに圧倒されて感激した後に
メッセージカードを改めてじっくり眺めて
彼女ははらはらと涙をこぼしました。

涙の理由を説明するかのように彼女は話してくれました。

「4人兄弟の中子で、破天荒で個性的な兄弟の中では
目立たない存在だった自分は
特に褒めてもらった記憶もなく普通の子だったんです
だからよく頑張ったね・・とそんな風に感じていてくれたことが
嬉しいな」

花を挟んで2人で話しながら涙が滲みました。

私は花をアレンジしているときも
何故生花の大きなアレンジを託されたかの意味も
痛いほど感じていたし
親とは何と思慮深く、愛情深き存在なんだろうと
何度も何度も考えさせられその想いの深さに気付かされたのでした。

あの弾けるような笑顔を引き出した花たち

遠い土地に住み一生懸命に道無き道を家族と切り拓きながら歩く
逞しくも誇らしくもあるけれど
心身ともに無理をしているであろう娘を想う両親からの
最大の”愛してるよ”のラブレターなんだなと。

どんな言葉より
響いたそのひとこと

物理的に距離があったとしても
心の距離はとても近い

それを花たちはご両親の言霊となって伝えてくれていました。

何とも嬉しそうだった彼女のあの満面の泣き笑いの顔

きっとずっとこの胸にも刻まれると思います。

”大切な想いを花に託す”

その重みを感じながら
花たちを次なる誰かにお届けするその瞬間まで
大切にお世話しなければと気が引き締まるものです。

そして思うのです。

もう逢えなくても
すぐに逢えなくても
傍にいることが叶わない存在がいるとしても
物理的な近さよりも
心から願う想いはきっと何にも変えがたい
価値のあるものであるということ

きっとそれはその人自身をまず温め得るものであるということ
そんな存在がこの世界にいることそのものが
幸せな奇跡であるということ

それを忘れずにいたいなと思います。

この度は遠くからの大切なご注文をありがとうございました。
いつか無事に行き来する日が来たら
また思いきり褒めてあげてください。

素敵な想いをありがとうございました。

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